認知症の予防「脳神経細胞を破壊する2つのタンパク質の前兆と予防」
前兆を知る
アルツハイマー型認知症を発病する脳にたまるタンパク質のゴミは、以下の順にたまり始めるようです。
- 新しい記憶や空間認識能力を持つ海馬にタウタンパク質がたまり始める
- その後、アミロイドβが脳にたまり
- 約10年後、タウタンパク質が大脳周辺に広がり、より高度な脳機能を持つ大脳新皮質を破壊
- 認知症を発病
認知症の主な症状には、以下があります(2014年、要介護者を在宅介護する家族へのアンケート調査の回答順)。
- 物忘れが多い
- 家事ができなくなる
- 昔話を何度でも繰り返す
- 生年月日や時間・場所がわからなくなる
- 失禁や介助なしには排せつができなくなる
- 財布やお金の管理ができなくなる
前兆を調べる
脳にたまるタンパク質のゴミを調べられるようになると治療を始める時期がわかり進行を遅らせることができるようになります。
脳のゴミを調べるには、がんなどの検査に使われている体の立体画像を作る陽電子放射断層撮影装置(PET)が期待されています。
検査は、患者にゴミを検出しやすくする特殊な薬剤を注射して薬剤を取り込んだ細胞などから放出される放射線を検出して行います。
放射線医学総合研究所(放医研)では、海馬にたまるタウを高感度で検出できるヘルメット型のPET装置を試作しています。
将来は、認知症の前兆を検査できるようになると期待されます。
認知症の治療
脳にたまるタンパク質のゴミを抑える方法はなく、現時点ではゴミを除去する治療法が求められます。
最初は、アミロイドβの除去が注目され、アミロイドβを除去するワクチンが開発されました。
しかし、アミロイドβを除去しても認知症は改善されなかったことから、タウタンパク質が原因と見られています。
米国のベンチャー企業や国内でもタウタンパク質を除去するワクチンの開発が進められていますが、まだ実現はしていません。
ゴミの検出とゴミの除去でアルツハイマー病の治療が可能になると期待できます。
45歳を過ぎたら認知症を予防する生活
予防に効果的な運動
運動すると認知症の予防になるのは、以下によります。
- 運動で筋肉を刺激すると血液中の成長ホルモンが増加
- 成長ホルモンは脳の海馬で神経系液性タンパク質の分泌を増加
- 増加すると脳神経細胞の生存と成長に寄与し認知症予防に効果的
効果を上げる運動量は、毎日30分〜1時間程度のウォーキングと週2〜3日程度の有酸素運動(瞬間的に強い力が必要な運動ではなく、比較的弱い力が筋肉にかかり続ける運動でエアロビクス、エアロバイク、ウォーキング、ゆっくりした水泳など)を継続的に行うことです。
食事に注意
認知症の予防には、血糖値の上昇を抑える食事順序(最初から米や麺類を食べると血糖値が上昇しやすく、上昇をおさえるには野菜から食べ始める)が重要です。
睡眠も重要
寝不足や夜中に何度も起きてしまう睡眠が浅いと脳髄液によるアミロイドβの排出量が減少して蓄積されやすい状態になります。
- アルツハイマー型認知症は脳にタンパク質のゴミがたまり発症
- がんとことなり無症状の期間が長い(約25年)
- 本格治療は今後ですが、運度、食事、睡眠に注意